G7 とか、主要国首脳会議とかよばれているあれです。伊勢志摩サミットは、あと 2 週間と迫ってきました。だいたい毎日、サミットに関するなにかしらの情報に接しますが、個別の詳細報道なんて、すぐに忘れてしまうんですよね。このエントリーでは、注目される議題や、サミット報道の予備知識として知っておきたい項目などを羅列しました。もしくは、成果報道の際の検証材料として。
ほら、セカイ系じゃない?(誤用)
伊勢志摩サミットの概略
サミットは、直接首脳同士が顔をつきあわせて行うため、国連の会合よりも実行力に長けると評されてきました。元は、先進国首脳会議と呼称していました。
参加各国の持ち回りで開催場所が決定されます。今年は日本で第 42 回目のサミットが行われます。開催期間は、2016 年 5/26、27 の二日間、場所は、三重県志摩半島の英虞湾内にある賢島です。伊勢神宮に近く、伝統文化や自然が豊富である点やテロ等に対する警戒警備がしやすい点などの理由で、海に囲まれた賢島が選出されています。
今次のサミットは、以下の 9 名によって構成されます。
- フランス共和国大統領 フランソワ・オランド 大統領
- アメリカ合衆国大統領 バラク・オバマ 大統領
- イギリス首相兼第一大蔵卿兼国家公務員担当大臣 デーヴィッド・キャメロン 首相
- ドイツ連邦共和国連邦首相 アンゲラ・メルケル 首相
- 日本国内閣総理大臣 安倍晋三 首相
- イタリア共和国閣僚評議会議長 マッテオ・レンツィ 首相
- カナダ首相 ジャスティン・トルドー 首相
- 欧州連合(EU) ドナルド・トゥスク 欧州理事会議長
- 欧州連合(EU) ジャン=クロード・ユンケル(ユンカー) 欧州委員会委員長
近年のサミットにおけるトピック
日本での開催は、第 26 回にあたる、2000 年、九州・沖縄サミット、第 34 回にあたる 2008 年の北海道・洞爺湖サミットを含み、6 度目になります。沖縄サミットのときには、2000 円札が発行されています。洞爺湖サミットは、洞爺湖に浮かぶ中島では行われていません。
2005 年のイギリス主催でスコットランドのグレンイーグルスで行われたサミットでは、ロンドン同時爆破事件が起きています。実行犯として、アルカイーダ系の組織の人間が逮捕されました。当時、ISIL はまだ存在していません。
2013 年までは、ロシアを含めて G8 と称していました。ロシアは、クリミア問題をきっかけに 2014 年からサミットへは不参加。また、一国の首脳ではない、EU 欧州理事会議長、EU 欧州委員会委員長も参加します。
カナダのトルドー首相以外は、2015 年の前回サミットと同じ顔ぶれです。トルドー首相の父も、首相として、カナダが初参加した第 2 回のサミット以降、8 度、参加した経験があります。
サミットの主なテーマ
今次のサミットでの課題
安倍首相は、今次のサミットの議長国として、各国との首脳会談を通じ、テロ対策、最大の課題である世界経済の停滞、アジアを含む地域情勢などについて、国際社会と連携した望む姿勢を明らかにしています。
テロ対策
パリ同時多発テロが起きたのは、2015 年 11/13 です。ISIL 系の容疑者が射殺、逮捕されました。ソフトターゲットがテロの標的になることは、かねてから懸念がありましたが、これ以後、テロに関してソフトターゲットをどのように警備するかの議論が活発になってきています。今回の伊勢志摩サミットに際しても、ソフトターゲットへのテロ対策が課題になっています。
欧州難民問題
難民の問題は、前回のドイツ・エルマウサミットでも言及がありましたが、その後も増加の一途をたどり、新たな局面を迎えています。欧州各国での難民受け入れ能力が限界に達し、「移動の自由」を掲げたシュンゲン協定が崩壊の危機に瀕するなど、EU というシステムへの影響が大きくなっています。これを受け、2016 年 3 月には、難民をトルコへ送り返す協定が結ばれましたが、その賛否をめぐっても議論が起きています。
パナマ文書
タックス・ヘイブン(租税回避地)に資金を経由させることによって、租税を逃れていた機関、人物などが記された大量の機密文書が、パナマの法律事務所から漏洩した問題。すでに、アイルランド首相が辞任に追い込まれたり、亡父の名前があった英キャメロン首相が釈明に追われるなどの展開になっています。タックスヘイブンに対する国際課税対策は、これまでも G20、OECD 会合の折々に話し合われてきた問題でもあります。今回のサミットにも取り上げられそうなテーマのひとつです。
前回サミットからの継続テーマ
2015 年、第 41 回のサミットは、2015 年 6/7、8、ドイツのエルマウ城で行われています。
不透明さを増す世界経済
首脳宣言では、「世界経済の回復は進展」とされていましたが、サミット以後、新興国経済の減速や原油価格の下落などを原因として、世界経済に対する先行きが不安視されています。
IMF のサイトでは、「世界経済の成長:余りにも長期にわたる余りにも緩慢な成長.pdf」、「原油価格と世界経済:複雑な関係.pdf」などで、悲観的な指摘もありますが、「IMF サーベイ・マガジン : アジア:成長は引き続き力強く、減速は若干にとどまる見込み」のようにアジアに関しては楽観的な見方をしています。
クリミア問題
年初の 2 度目のミンスク停戦合意をうけてのウクライナ情勢への対応が大きな焦点でした。このクリミア問題は、発生当初こそ、欧米対ロシアの構図で移行してきましたが、ミンスク合意以後は、ウクライナのポロシェンコ大統領への無条件支持ではなくなってきています。
日本は、エルマウサミット直前のウクライナ訪問、伊勢志摩サミット前のウクライナポロシェンコ大統領訪日などを設定し、この問題に対する関心の姿勢を強調しています。
中国への牽制
首脳宣言には、国名こそなかったものの、「東シナ海及び南シナ海での緊張」についての指摘があります。南シナ海の人工島に対しては、米海軍による計 3 度目の「航行の自由作戦」が 5/11 に行われたばかりです。また、中国が主導する AIIB(アジアインフラ投資銀行)に対しても、G7 間での情報共有などで対応することなどが話し合われています。同年 5 月には、「質の高いインフラ投資」のために、ADB(アジア開発銀行)と連携することも発表されています。この「質の高いインフラ投資」は、今次のテーマのひとつになっています。
新たな開発目標
発展途上国への教育や保険などのソフト面、水やエネルギーなどのインフラ面などの開発目標への連携が話し合われています。
「持続可能な開発」については、エルマウでの首脳宣言にしたがって、2015 年 9 月の国連サミットで、MDGs(ミレニアム開発目標)の後継となる、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択、SDGs(持続可能な開発目標)が策定されています。
参加各国の最近の事情
日本
金融緩和と財政出動を目玉としたアベノミクスは、安倍首相の就任以来、一定の成果をあげてきました。しかし、昨今の世界経済の停滞や 2014 年の消費税増税による内需への影響が尾をひき、いまだ、当初のインフレ目標に到達していません。金融緩和に対して、財政出動の規模が小さいとの指摘もあります。
各国に向けて財政出動を議題とする手前、日本だけ増税するという選択肢は取りづらく、消費税率引き上げについて、「サミットでの議論踏まえ判断」すると述べています。
北朝鮮が 5 月初旬の朝鮮労働党大会において、核保有宣言をしました。東シナ海、南シナ海では、中国に対する脅威論がやみません。そのため、外交、安全保障の観点からのアジア情勢への言及が期待されます。
また、サミット前の 2 カ月間で参加各国の首脳すべてとの会談が持たれています。
- 3/31 日加首脳会談 | 外務省
- 3/31 日米首脳会談 | 外務省
- 5/2 日伊首脳会談 | 外務省
- 5/2 日仏首脳会談 | 外務省
- 5/3 日EU首脳会談 | 外務省
- 5/4 日独首脳会談 | 外務省
- 5/4 日英首脳会談 | 外務省
- (5/6 日露首脳会談 | 外務省)
フランス
パリ同時多発テロ以降、その実行犯と難民との関連性が指摘され、EU 域内では、難民問題に対する意見の衝突が目立っています。EU は、単一市場(Single Market)を形成するために、域内の人・モノ・資本・サービスの移動の自由を標榜してきましたが、そのうちの「人」の移動の自由は、実質的に崩壊しているといえます。
オランド大統領は、来年、大統領選を控えていますが、雇用問題を背景として、再選は厳しいと予想されています。
アメリカ
トランプ候補者が共和党の予備選挙で勝利確定、大統領選出に現実味が出てきました。アメリカファースト、モンロー主義への回帰とも、「世界の警察」に意欲があるともいわれており、まだ、不確定要素が多いようで、軽々な見通しはたたないようです。ただし、トランプ氏の登場によって顕在化した「アメリカの本音」のようなものは、たとえ、民主党候補が勝ったとしても、その後の政権運営に影響を与えるだろうと予想されています。
イギリス
キャメロン首相の亡父の名前がパナマ文書にでており、不当な利益を得たとされています。6 月には、EU 脱退を問う国民投票が控えています。離脱となれば、世界最大の金融街シティの地位の没落と、英 EU 間の関税復活による貿易に与える影響が懸念されることになります。
ドイツ
現在の難民問題は、メルケル首相の発言によってエスカレートしたという側面が指摘されています。また、財政規律重視のメルケル首相は、今回のヨーロッパ歴訪で唯一、首脳会談において「機動的な財政出動が求められているとの認識で一致」できませんでした。変わらぬ財政出動に慎重な姿勢を示したといえます。
(2)メルケル首相からは,財政出動においては自分はフロントランナーではないが,金融政策,財政政策及び構造改革を同時に進めていくことが重要である旨述べ,特に民間投資喚起の重要性を指摘しました。
イタリア
2016 年、日本とイタリアとは、国交樹立 150 周年を迎えます。5/10 には、秋篠宮ご夫妻がイタリアへ公式訪問されています。
ギリシャ危機として現れた EU 域内の財政危機は、イタリアにも広がる可能性あります。これらは、国内の政治や経済に原因を求めることができますが、そのほかの大きな要因として、に、EU の共通通貨であるユーロを導入し、独自通貨を廃したため、独自の金融政策が取れなくなったことも挙げられます。
カナダ
カナダでは、5 月初めに大規模やな山火事が発生したばかりで、約 10 万人が避難しています。近くの石油関連施設が生産を縮小するなど、国内の経済成長や原油価格にも影響が及んでいます。
サミットに関連するさまざまな会合の名称
アウトリーチ会合
アウトリーチ会合とは、サミットの際に開催される、G7 以外の国々の首脳及び国際機関の長を招待して開催する会合です。今次のサミットでは、経済成長が期待されるアジア各国やアフリカ連合議長国、国連、OECD(経済協力開発機構)、ADB(アジア開発銀行)、IMF(国際通貨基金)などの長が招待されています。
先のドイツ・エルマウサミットでは、2 日目の「テロ」、「開発」、「女性」、「保健」、「アフリカ」の各テーマが、アウトリーチ会合として、行われました。
サミットに合わせて開かれる大臣級会合
首脳会談の前後には、関係閣僚会議が国内複数個所で行われます。
今年の外務大臣会合では、広島の平和公園の献花台前で、岸田外相と米ケリー国務長官とが互いに背中に腕を回している写真が有名になりました。サミット後には、米オバマ大統領の広島訪問が、発表されています。
ここまで
5 月に入っても、ばたばたと状況が進行している感があります。このエントリーは、とりあえず、ここまで。